岡山県総合展示場 コンベックス岡山
民間企業

「コンベックス岡山」は岡山市北区大内田に位置し、総展示面積7,783㎡と岡山県下では最大規模を誇る総合展示場だ。施設は岡山県が所有しており、管理・運営は指定管理者としてコンベックス岡山コンソーシアムが行っている。コンソーシアムは丸田産業、ティ・シー・シー、山陽セフティの3社で構成される共同体である。2024年に復活した音楽フェス「Eight Ball Festival」は2025年も開催。34組の有名アーティストが共演し、約6,000人のファンが来場し施設を利用した。
〒701-0165 岡山県岡山市北区大内田675
クラウド型ネットワーク機器管理サービスの導入で展示会場のWi-Fiサービス提供と運用効率化を実現
岡山市北区に位置する総合展示場コンベックス岡山(以下、「コンベックス岡山」)は、D-Linkのクラウド管理型ネットワーク機器を2025年3月に導入。まずは大展示場でのWi-Fiサービスの試験提供を開始した。導入した製品は、UTMファイアウォール「DBG-2000」と、L2スマートスイッチ「DBS-2000シリーズ」、およびWi-Fi 6対応無線アクセスポイント「DBA-X2830P」などのクラウド管理が可能な製品だ。既設ネットワーク機器の老朽化をきっかけに、出展者からのWi-Fiサービス提供の要望に対応するために、Wi-Fiの導入も行ったという。今回の導入がどのような変化をもたらしたのか、コンベックス岡山の藤川氏、およびシステムインテグレータであるオービスの朝倉氏と松山氏に話を伺った。
<POINT>
クラウド管理型製品の導入で保守効率を高めることを実現
導入の決め手は、必要十分な機能性と他の検討製品よりも高いコストパフォーマンス
展示会場で新たにWi-Fiサービスを提供することで付加価値向上を実現
導入製品紹介

コンベックス岡山では、クラウド管理型のUTMファイアウォール「DBG-2000」とL2スマートスイッチ「DBS-2000-28」を管理事務所のラックに設置。大展示場ではPoEスイッチ「DBS-2000-10MP」を床下に配置し、そこから南北に1台ずつWi-Fi 6対応無線アクセスポイント「DBA-X2830P」を設置するような構成にしているそうだ。
展示会場特有の工夫として、無線アクセスポイントまで延ばすLANケーブルの工事では、通常のプラスチックモールは使わず、金属製の配管を使用しているという。これは物の出入りが多い環境のため、物がぶつかることでLANケーブルが切断されることを防止する対策だという。また床下の側溝にもケーブルを通しているそうだが、側溝の蓋が金属製で非常に重く、その上蓋が落ちることによるケーブルの断線を避けるため、側溝の底にではなく、側溝の横に這わせるようにしたという。設置工事を担ったオービスの朝倉氏は「コンベックス岡山様からそうした展示会場ならではの、あり得るリスクを事前に伺うことができたので、安心してご利用いただけるネットワーク環境を実現できた」と当時を振り返りながら話をしてくれた。

▲設置された「DBG-2000」と「DBS-2000-28」

▲鉄製の配管でLANケーブルを保護「DBA-X2830P」
必要十分な機能と、他社製品と比較してコストパフォーマンスに優れた提供価格が決め手に
クラウド管理型製品を選定した経緯とは
コンベックス岡山では、ネットワーク機器の老朽化によるネットワーク障害の可能性があり、更新が必要となっていた。その際、Wi-Fiサービスの提供への要望もあったことから、第一段階として大展示場へのWi-Fi環境導入を進めることとなった。「元々は財団がここを管理していて、それを全て引き継いだ状態だったので、正直なところネットワーク機器がどんなものが入っていて、どういう構成になっているのかも全く分からない状態でした。」と藤川氏は当時の状況を説明する。
オービスの朝倉氏は「元々A社のルータとD-Linkのスイッチが導入されていましたが、適切に管理されていない状態でした。有事の際に対応ができないと困るというお話があり、ご相談をいただきました」と当時を振り返る。
機器選定にあたっては、簡素で運用しやすい環境と導入・運用費がコストパフォーマンスに優れることが重視された。朝倉氏は「とにかく運用が簡単で必要な管理ができるものを必要とされていたため、クラウド管理対応のNuclias Cloudをご提案しました。また、展示場のイベントの際に、人が密集しすぎてキャリア回線が繋がりにくくなる事があり、出展者向けに無線LANをサービスとして提供したいとの要望もあったため、合わせて導入を検討しました」と提案の経緯を説明する。他の製品として3社ほど別メーカーの製品も検討されたそうだが、「他社製品と比較すると、コストパフォーマンスに優れているかと思います。D-Link製品はお客様の要件を十分満たす機能を備えながら、コスト面で優位性がありました」と選定理由について語ってくれた。

コンベックス岡山
EXHIBITION MANAGER
藤川 知宏 氏
段階的な拡張を見据えた第一期導入
約5ヵ月の検討後、第一段階として大展示場への導入が進められることとなり、2025年1月から運用を開始したという。「いきなり全体で導入するのではなく、まずは大展示場で試してみることにしました。実際に運用してみてどういうものか、どういうことができるのかを確認するためです」と藤川氏は初期導入の狙いを語る。
運用開始当初は、希望する出展者に対してID・パスワードを発行し、Wi-Fiサービスをお試しとして提供を行ったそうだ。「オービスさんにID・パスワードを100個程作成してもらって、それを出展者に1個ずつ渡すような運用にさせていただきました」と藤川氏は説明する。
無線アクセスポイントの設置にあたっては、事前にカバーエリアや取り付け位置の調整が行われたそうだ。松山氏は「実機を使い、どこに配置したらどこまで無線電波のカバーができるのかを測ったところ、2台で大体エリアをカバーできると判断しました」と話す。設置位置は約3メートルの高さに取り付けられており、万が一の故障の際に交換しやすい高さであることを考慮しているそうだ。
Wi-Fiサービスの運用は初めてでもあり、トラブルもあった。「お試しで使ってもらった来場者の受付システムで、無線LAN接続がよく切れると言われたのです。調べてみると設定が2時間で切断されるようになっていたことが原因だったことが分かり、10時間の連続使用ができるよう設定を変更しました」と藤川氏は話す。設定変更はクラウド経由でオービスにて実施したそうで、現地に駆け付けないで済むメリットは、改めて感じることができたという。

コンベックス岡山の今後の計画と展望とは
現在は試用期間が終了し、出展者向けWi-Fiサービスを有料化したそうだ。今後は中展示場、小展示場、2階の国際会議場、バンケットホールへと拡張していく計画があるという。「特に会場の性質もあり、国際会議場ではWi-Fiはないのかということをよく聞かれますし、そちらへの展開も必要だと考えています」と藤川氏は語る。国際会議場はスクール形式の会場レイアウトで250人、バンケットホールと合わせると更に収容人数が増えるため、来場者からのWi-Fiサービスのニーズは高い。
また、「お客様の中には『中展示場はまだですか』ということもよく言われるようになりました。すでに他の展示場を利用する出展者からも、Wi-Fiサービスの提供を求める声が上がっています。早く実現すれば、出展者がWi-Fiサービスを利用する回数も増えてくるのではないかと期待しています」と藤川氏は見込む。拡張時期については「2025年の夏くらいには何とかしたい」と藤川氏は語っていた。
Wi-Fiサービスの運用方法についても工夫している。「利用料を取る方法として、ユーザーIDとパスワードを個別に発行して、使い終わったら無効化するようにしています」と朝倉氏は説明する。「この仕組みがクラウドサービスだけでできる製品はあまりなく、できる製品であっても、別のライセンスや製品が必要になります。Nuclias Cloudの場合は、ローカル認証DB機能を使って簡単に実現できるという当たりがついていたことも、良かった点だと思います」。
最終的な評価として朝倉氏は「クラウドからの一元管理が可能になったことで、状態確認や設定変更、障害対応の迅速化も実現し、運用の柔軟性が向上しました。これにより、担当者の業務負担が軽減されるだけでなく、ネットワークの安定性向上にも寄与しています。Nuclias Cloudの導入を通じて、より効率的かつスムーズな運用が可能となり、今後の拡張にも対応しやすい環境が整ったと考えています」と総括した。
藤川氏も「Wi-Fi環境が整えば利用者も増えると思います」と期待を寄せ、早期の全館展開に意欲を示している。
Nuclias Cloudによるクラウド管理型ネットワーク環境の構築により、コンベックス岡山は限られた予算内で施設の付加価値向上と運用効率化を同時に実現した。今後の全館展開を通じて、さらに展示会場としての利便性を高め、魅力を高めていくことだろう。
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