L2スイッチとL3スイッチの基本知識|役割の違いと選び方のポイント

ネットワーク関連のスイッチにはさまざまな種類がありますが、特に「L2(レイヤ2)スイッチ」と「L3(レイヤ3)スイッチ」の違いは混同されやすいポイントです。本記事では、スイッチの基本的な役割とL2スイッチとL3スイッチの違いについて詳しく解説し、ネットワークに適切なスイッチを選べるようになることが目的です。
そもそもスイッチとは?
スイッチとは、通信データの交換機能を持つ中継装置の総称です。複数のコンピュータやLANを接続し、機器間の通信を取り持つ役割を果たします。以前は「スイッチングハブ(Switching Hub)」と呼ばれていましたが、現在では「スイッチ」という名称が一般的です。
スイッチは、接続ポートを通じてデータを受信し、適切なポートへ転送します。特定の宛先にのみデータを送ることができるため、複数のコンピュータが接続された環境でも相互通信が可能になります。
L2スイッチとは
L2スイッチは、「開放型システム間相互接続(Open Systems Interconnection)」通称、「OSI参照モデル」のレイヤ2(L2)「データリンク層」に対応する機器で、主にフロアスイッチ、エッジスイッチに適しています。
LANケーブルを通じて機器がスイッチに接続されると、その機器のMACアドレスを認識・記録します。データの送信元から情報が届いた際に、宛先のMACアドレスを確認して、対象機器に転送します。
L2スイッチでネットワークの効率化
L2スイッチが普及する以前に使われていたハブ(ダムハブ)は、受信したデータをすべてのポートに送信していました。その結果、宛先ではない機器にもデータが届き、ネットワーク上に不要な通信が発生していました。
L2スイッチはMACアドレスを記憶し、宛先のポートにのみデータを転送するため、効率的なネットワーク運用が可能となっています。
L3スイッチとは?
L3スイッチは、「OSI参照モデル」のレイヤ3(L3)「ネットワーク層」に対応する機器で、主にコアスイッチやディストリビューションスイッチに適しています。L2スイッチはMACアドレスを参照して同一ネットワーク内でデータを転送しますが、L3スイッチはIPアドレスを参照して異なるネットワーク間でデータを転送できます。これにより、特定の部門やプロジェクト向けに専用ネットワークを構築することが可能になります。L2スイッチが部門ごとのPCやサーバをまとめる役割を果たすのに対し、L3スイッチはそのL2スイッチを統合し、高度なルーティングを提供することができます。L3スイッチの方がより柔軟性の高いネットワーク構築が実現できるのです。
L2+スイッチについて
L3スイッチの機能を一部実装したL2スイッチのことを「L2+スイッチ」と言います。(実装する機能はメーカーにより異なります)
L2スイッチとL3スイッチの中間的な位置付けで、エッジスイッチとディストリビューションスイッチをつなぐ役割を担うフロアスイッチとして使われることが多いスイッチです。
L2スイッチとL3スイッチの違い
L2スイッチ | L3スイッチ | |
---|---|---|
OSI参照モデルの階層 |
データリンク層 |
ネットワーク層 |
対象のネットワーク |
LAN内の通信 |
内部ネットワーク同士の通信 |
VLAN |
ルーティング不可 |
ルーティング可 |
データ転送制御方法 |
MACアドレス |
IPアドレス |
主な用途 |
フロアスイッチ、エッジスイッチ |
コアスイッチ、ディストリビューションスイッチ |
OSI参照モデルの階層
L2スイッチは「OSI参照モデル」のデータリンク層に位置し、デバイス間の直接的な通信を最適化します。
L3スイッチはネットワーク層に位置し、異なるネットワーク間の通信を管理します。
対象のネットワーク
L2スイッチはLAN内の通信を効率化するのに対し、L3スイッチは社内LANなどの内部ネットワーク同士を接続するために用いられます。
VLANの設定
L2スイッチとL3スイッチの両方においてVLANを構築することは可能ですが、VLANを跨いだルーティングが可能なのはL3スイッチのみです。L3スイッチは個々のVLAN同士の通信を転送することができます。
データ転送制御の方法
L2スイッチはMACアドレスを基にパケットを転送する一方、L3スイッチはIPアドレスを使用します。
さらに、重要なデータの転送を迅速に行うためのQoS の設定が可能であり、トラフィックの優先順位を設定することができるため、パフォーマンスの向上を図ることができます。
L2スイッチとL3スイッチの運用
L2スイッチは同一ネットワーク内の接続機器との通信だけでなく、管理するためにも利用されます。L2スイッチの運用ではVLANがよく利用されます。
VLANとは、物理的な接続形態に依存せず、仮想的にネットワークを構築する技術です。主に社内ネットワークの構築に利用されます。VLANを使用しない場合、ネットワークを分割するには追加のスイッチが必要ですが、VLANを活用すれば仮想的にネットワークを分割できるため、スイッチの増設や配線の再構築を最小限に抑え、負担を軽減できます。
しかし、L2スイッチはMACアドレスを参照するため、外部ネットワークにデータを転送することができません。ネットワーク内のアクセス制御や監視機能において、より高度な管理が求められる場合、L2スイッチだけでは対応しきれないことがあります。
その点、L3スイッチは、ルーティング機能を持つため、より広範なネットワーク管理が可能です。拠点や部門ごとにネットワークをもつ企業などでは、L3スイッチの導入が必要になります。
例えば、社内ネットワークをVLANで構成した場合、L2スイッチ単体ではVLAN間のデータ通信はできませんが、L3スイッチを使用すれば実現できます。ただし、L2スイッチよりもコストがかかるため、大規模な企業ネットワークでは欠かせない存在ですが、中小規模のネットワークでは費用対効果を検討する必要があります。
ルーターとL3スイッチの違い
ルータとL3スイッチは、どちらもLANを超えて通信をするための機器です。両者ともルーティング機能を備えていますが、用途が異なります。ルータは主にLANとWANの境界に設置されるのに対し、L3スイッチはLAN内に配置され、ネットワーク内部の接続を担うスイッチとして機能します。 (L3スイッチでもWANポートが搭載されたモデルもあります)
まとめ
L2スイッチは、OSI参照モデルの第2層「データリンク層」に対応する機器です。中小規模ネットワークのエッジスイッチとしての使用に適しています。MACアドレスを基にデータを適切な宛先へ転送し、主にLAN内のデバイス間の通信を管理します。
L3スイッチは、OSI参照モデルの第3層「ネットワーク層」に対応する機器です。大規模ネットワークのコアスイッチやディストリビューションスイッチとしての使用に適しています。IPアドレスを基に異なるネットワーク間でデータを転送し、企業のネットワークではL2スイッチを統合し、より高度なルーティングを提供する役割を果たします。また、L3スイッチの導入により管理性は向上します。ネットワークの通信効率は高まりますが、中小規模のネットワークでは費用対効果を検討する必要があります。
L2とL3の役割の違いから選び方のポイントをご理解いただけたでしょうか。
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